日々つれづれ
005 走り去るガルカ様

すっかり戦いに魅了されたバトル馬鹿ことチョップくん。その後もミミズだの鳥だの亀だのゴブリンだのを相手にし、順調にレベルをあげた。いつものように何に使うか分からないアイテムを売りさばこうとバストゥークに戻った時である。商業区の競売所前でバザーを開く1人のガルカが目に入った。このFF11の世界でアイテムを売ろうとする時、大きく3つの方法が挙げられる。

まずは普通のRPGのようにお店に持っていって売る方法。そして競売所でオークションにかける方法。3つ目が個人的にバザーを開いて街行く人々に買ってもらう方法である。通常バストゥーク商業区の競売所前では大勢の人々がバザーを開いている。時間がたっぷりある時なら別だが開いている人ひとりひとりをこまかくチェックしていくなんて到底できはしない。そんな中でチョップくんが彼に目を留めたのは自分の姿と彼の姿があまりに似ていたからである。その姿は兄弟や双子と表現するよりもクローンと言ったほうが正しいほどであった。
彼のバザーを覗くと出品した品はあらかた売られた後なのかわずかなアイテムが残っているだけであった。しかしそのわずかな残りの中に「甲羅の盾」なるアイテムを見つけたのだ。「戦士を気取ってバトル馬鹿なんて言ってるわりに盾の一つも装備していないなんて、、、、」不意にそんな思いが貫いた。設定価格は130ギル。チョップくんの所持金648ギル。装備可能レベル7から。チョップくんの現在のレベル、、、、7。決定である。チョップくんは盾を購入し、彼に一礼するといそいそと装備してみた。

おおお!サンクス、バザーの人よ!他人の目にどう映っているかは分からないが俺の目には輝いて見えますよ!光を放っていますよ!チョップくん重装甲ヘヴィ化計画の第一歩である。
新しい装備に変えた後というのは、その効果やグラフィックを見たいという理由からとにかく一戦交えるのがチョップスタイルである。急いでアイテムを店に売りとばし、すぐに南グスタベルグにきびすを返す。

身近にいた亀に剣を振り降ろす。ふむ。目に見えて受けるダメージが減ったという感じではないものの気分が違う。やはり盾を装備してこその戦士だろう。(あくまで片手武器の場合ですが。)そしてなにより今まで全く変動の無かった「盾スキル」が上がっていくのが嬉しいではないか。購入して大正解である。

気持ち良く上がっていくレベルと、もともとの戦闘の面白さ、加えて盾を購入したことによる新たな刺激のせいで冷静さを欠いたと気がつくのはこの直後である。いや、冷静さを欠いたというよりも判断力が鈍っている事に気がつかなかったと言うべきか?いずれにしても窮地に追い込まれたのには変わりがない。

ゲームを始めたばかりの頃に全く手の出なかった亀が倒せるようになって喜んでいたチョップくんはガンガン亀ばかりを狙い、次々となぎ倒していった。レベル4の時にうかつに手を出して殺された恨みとばかり執拗に亀を狙う。倒してはしゃがみ(※1)しゃがんでは倒し、そしてまたしゃがむ。うまい具合にチョップくんの15メートルほど先に亀がポップ(※2)する。周りには同様にレベル上げをしている冒険者たちがいるため、ぼやぼやしているとチョップくんの獲物が取られてしまうのだ。急いで立ち上がり剣を抜きその背中に背負う甲羅めがけて斬り掛かる。チョップくんの一撃に激怒しくるりとこちらに向きを変える亀。奴の持つ剣からも重い一撃が繰り出される。「ハッハー、望むところだぜ、来いよドン亀!」完全に陶酔しきったチョップくんが「おや?」と思ったのはこの直後である。こちらが与えるダメージよりも相手から受けるダメージのほうが明らかに大きいのである。ここに至ってハタと我に返る。「FF11で戦闘をする際の第一ステップを忘れてはいなかったか?

急いで亀をタゲり調べるコマンドを選択。青ざめて画面を確認する。するとそこに表示された文字は思ったとおり「強そうだ」というもの。戦闘が進むにつれどんどん不利な状況においこまれてゆく。コチラの残り体力はおよそ3分の1。対する亀は半分以上の体力を残している。ここまで追い込まれてからでは逃げたところで間に合わないのは目に見えている。ならば少しでも相手の体力を減らしてから散ってやる。それが戦士の生き様さ。と前のめりに倒れるならば「見事なり」の声も湧こうものをぶざまに逃げ出すチョップくん。心の中で「タスケテー」と叫んでみるももちろんゲーム内に反映はされない。このぎりぎりの状況ですばやくチャットモードを「say」もしくは「shout」に切り替えて(※3)助けのメッセーッジを打ち込むなどというスキルはまだない。当然逃げられるハズもなく残りの体力は18に。「もうだめだ」諦め足を止める。ホームポイント(※4)は商業区だったかな?
瞬間、チョップくんの残り体力がぐぐと増える。え?なに?自分の身に起こった事が把握できない。カメラアングルをぐるりと回してみると数メートル先の岩陰に1人のガルカがこちらに向けて魔法を発動させている。うわさに聞いた辻ケアルというやつである。またぐぐと増えるチョップくんの体力。同時にそのガルカ氏からチャットウインドウにメッセージが伝えられる。

「攻撃つづけて〜^^」

ハタと我に返り再び亀に向き直り攻撃を続ける。少しずつではあるもののしかし確実に亀の体力は減っていく。一方こちらはと言えばガルカ氏からのケアルによりすっかり体力全快である。こうなるともう勝敗は明らかだ。事務をこなすようにとどめの一撃を亀にくらわしガルカ氏の元に歩み寄る。どうにかこの感動を感謝の気持ちを伝えたいとおもうのだが言葉が見つからない。結局出てきた言葉は「ありがとうございました」というものだった。これに対しガルカ氏は「頑張ってくださ〜い」と言葉を返し岩の向こうへと走りだした。こんな出来事はFF11に於ては毎日繰り返される日常であり、特筆すべき事ではないのかもしれないが、チョップくんは感動につつまれていた。走り去るガルカ氏の後ろ姿をイセリナよろしく尊敬と羨望の眼差しで見送った。「ガル魔様、、、、。」(ツッコミ待ち。放置プレイ大歓迎)

※1 しゃがむ
FF11ではしゃがむ事によってヒットポイントとマジックポイントが回復する。初期段階でサポートジョブが着いていない戦士にとってはしゃがむ事が唯一の体力回復法と言ってもよい。体力を回復させる薬品もあるにはあるのだが値段が高く新米冒険者がいくつも買えるようなものではない。

※2 ポップ(POP)
フィールド上に敵が出現することを「ポップする」という。英語圏の人にも通じるがspawnとかbreedを使う人のほうが多いみたいです。

※3 チャットモードを切り替えて
FF11には5種類のチャットモードが存在する。自分の周囲(だいたい画面上で見渡せるくらいの範囲)だけにメッセージを送る「say」。自分で選んだ特定の相手にだけメッセージを送る「tell」。かなり広範囲にわたり(マップ上の3マス分と聞いたことがあります)不特定多数にメッセージを送る「shout」。パーティーを組んだ際にパーティーメンバーにだけメッセージを送る「party」。リンクシェルという特殊な通信アイテムを持っている特定多数(同一リンクシェルメンバー)にメッセージを送る「linkshell」の5モード。
ここでチョップくんが「seyか
shoutで助けのメッセージ」を打ち込もうとしたのは周囲の誰かにこちらの危機を知らせたかったためである。

※4 ホームポイント
FF11では自分の体力がゼロになると「戦闘不能」という状態になる。その際あらかじめ自分で設定しておいたホームポイントと呼ばれる場所からやり直しとなる。

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